
難しいことがいっぱいあったら自信がないわ。
でも全部自分でしなくても大丈夫なんだよ。


気になるからいろいろと知っておきたいわ!
住宅を解体する場合、たくさんの手続きが発生しますが、すべてを家主がする必要はありません。なかには解体業者が代行してくれる手続きも。
今回は住宅の解体時に必要な手続きについてご紹介します。

住宅を解体する前に行う手続き
「建設リサイクル法」の届け出
建設リサイクル法とは、正式名を「建設工事に係る資材の再資源化に関する法律」と言って、住宅の解体着工前に市区町村へ届け出する義務を定めたものです。
建築物の解体工事では延床面積が80㎡以上ある場合、着工の1週間前までに工事場所・工事内容などの書類を届け出なければいけません。
一般的に、この届け出は解体工事を請け負う業者が代行します。
建設リサイクル法の事前申請は法律上、施主本人(解体工事を依頼した家主など)に届け出の義務があります。業者に代行してもらう場合は、施主が業者へ委任状を渡す必要があります。
多くの場合は業者が無料で代行してくれますが、なかには有料になるケースもあるので、契約の際に確認をとっておくとよいでしょう。
届け出を怠った場合の罰則と対応
届け出が行われなかった場合、届け出に不備がある場合にどのような措置が取られるのか説明します。
届け出を怠った場合、段階を踏んで通達の措置を取られることになります。
①簡易的な注意
②行政指導
③行政処分
通達は解体を依頼した家主へ届きます。従わなかった場合、最大で20万円の罰金が課せられます。
届け出不備の通達が家主の元へ届いても、速やかに対応すれば罰金を払う必要はありません。
道路使用許可申請
解体工事を行う時、重機や大型トラックを駐車する必要があります。
解体する家の敷地に駐車できるスペースがあれば問題ありませんが、多くの場合は道路上に停めなければいけない状況です。
その場合、管轄の警察署へ道路使用許可の申請が必要になります。申請の際は証紙代として数千円の費用が発生します。
申請は解体業者が行うことがほとんどですが、必要な申請書類もあわせてご紹介します。
道路使用許可申請に必要な書類 |
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書類記入の際は、直接パソコンに入力するか、黒インク、ボールペンで記入します。鉛筆は使用できません。
申請書は直接管轄の警察署へ提出するか、書留郵便で郵送することも可能です。
しかし、申請に不備があった場合は、改めて窓口へ行く必要があるので注意しましょう。
ライフラインの停止
解体工事が始まる前に、家主側は電気・ガス・固定電話などのライフラインを停止する手続きをしなければいけません。
手続きは電話やオンラインでできますが、解体間際での申請になると停止措置が間に合わないこともあるので早めの連絡を心掛けましょう。
遅くても解体1週間前には停止の手続きをすることをおすすめします。
手続きに必要な事業所の電話番号や個別の番号は、検針票や請求書に記載されているので準備しておきましょう。
主に手続きが必要なライフラインをまとめました。
電気・ガスの停止手続きについて
電気 | ガス | |
手続きの方法 | ・WEB
・電話 |
・WEB
・電話 |
必要な情報 | ・お客様番号(※1)
・名前(契約者名義) ・電気の停止日 |
・お客様番号(※1)
・名前(契約者名義) ・日中に連絡可能な電話番号 ・ガスの停止日 ・停止に伴う立会希望時間 ・立会人氏名 |
依頼内容 | ・電気の停止
・電気メーター、引込線の撤去 |
【都市ガス】
・メーターの閉栓・撤去 ・ガス管の地境切断 【プロパンガス】 ・ガスボンベの撤去 |
受付時間 | ・WEB…24時間
・電話…各電力会社の営業時間内 |
・WEB…24時間
・電話…各ガス会社の営業時間内 |
手数料 | 無料 | 無料(※2) |
立ち合い | 不要 | 必要 |
※1…お客様番号は検針票や領収書に記載されています。
※2…ガス会社からリースのコンロやガス機器を使用していると、途中解約の際に解約精算金と取り外し費および返還費がかかる場合があります。
固定電話の停止手続きについて(NTT利用の場合)
固定電話には「利用休止」「一時中断」「解約」とあり、それぞれによって手続き後の状況が変わります。
利用休止 | 一時中断 | 解約 | |
申込内容 | 利用を休止するがまた再度使用する | 一時的に電話回線を中断したい | 今後電話回線を利用しない |
継続期間 |
最大10年 (5年ごとの更新が必要) |
回線再開の申告がされるまで | ー |
回線使用料の支払い | 不要 | 必要 | ー |
再利用時の電話番号 | 変更 | 継続 | ー |
回線停止の工事費
(R2年6月現在) |
2,200円(税込) | 2,200円~11,000円程度(税込) | ー |
回線再開の工事費
(R2年6月現在) |
2,200円~11,000円程度(税込) | 2,200円~11,000円程度(税込) | ー |
水道の停止手続きは解体後におこなう
水道は、解体工事中にホコリが舞うのを防ぐために散水として使用することが多いので解体前に停止の手続きはしません。
解体業者と打ち合わせをし、工事が完了するあたりの日にちを決めて水道を停める手続きに入るとスムーズです。
住宅の解体が決まったら、電気・ガス・電話以外にもご家庭で契約しているライフライン(インターネットや新聞など)の洗い出しをしておきましょう。
建物内の家具・家電の処分
家主は解体前に建物内に残っている家具や家電を移動・処分する必要があります。残留物があると、解体費用とは別に処分費用がかかります。無駄な費用が発生しないように解体工事が始まる前にすべて移動・処分しましょう。
ただし、家具のなかでも、タンスや木材だけでできたものは解体時に一緒に処分してくれる場合もあります。解体の見積りの際に業者へ相談してみるのも手です。
家電は、基本的には解体業者では処分できません。
冷蔵庫・テレビ・洗濯機・エアコンなどは「家電リサイクル法」の対象となり、購入先や家電メーカーがリサイクルすることになります。
家電の処分にはいくつか方法があります。
【処分方法】
購入店へ自分で持ち込み
指定の引き取り場所へ自分で持ち込み |
・家電1点からリサイクル料金が発生。
・比較的費用を抑えて処分が可能。 |
不用品回収業者へ回収を依頼 | ・回収を依頼した場合、リサイクル料金に加えて別途収集・運搬費用が加算。
・リサイクル料金に回収・運搬費用が追加でかかるため購入店へ持ち込むより費用は割高。 |
家電リサイクルショップへ
買取依頼 |
・家電リサイクルショップへ買取をお願いする。
・比較的きれい・新しい家電は現金へ換金できる可能性も。 |
不要になった家電の引取りにはリサイクル料金と収集・運搬料金が必要です。リサイクル料金はメーカーごとに、収集・運搬料金は業者ごとに異なります。
浄化槽の汲み取り(バキューム)
浄化槽のある住宅では、解体工事を始める前に浄化槽の汲み取り(バキューム)による中身の処理を処分業者や自治体へ依頼する必要があります。
浄化槽の処理ができていない場合、解体工事のスケジュールに遅れが生じることもあるので注意が必要です。
「依頼主」「解体業者」のどちらでも依頼できるので、解体工事の契約の際に決めておくといいでしょう。
浄化槽本体は汲み取り処理完了後、解体業者によって撤去されます。
汲み取り(バキューム)の費用は、地域・業者によって異なりますが15,000円~30,000円が相場です。
近隣への説明
解体工事が始まると、騒音やホコリの飛散など、近隣の住宅に迷惑を掛ける可能性があります。
解体工事に取りかかる前に近隣への挨拶は解体業者はもちろんのこと、家主もあわせてしておくとよいでしょう。
また、自治体によっては解体工事に伴う近隣への説明が義務付けられている地域もあります。念のため、そのような条例がないか役所へ確認をとりましょう。
大気汚染防止法の一部改正について
大気汚染と聞くと解体工事にはあまり関係のなさそうな法律ですが、「大気汚染防止法」は解体工事をするにあたって、とても関わりのある法律です。
「大気汚染防止法」とはアスベストという建材に関係する法律で、2020年5月29日に可決、成立しました。
内容は、全てのアスベストを含む建材の規制対象が「レベル3」に拡大され、都道府県など自治体へ事前の調査結果の報告が、解体工事の元請業者から都道府県等へ義務付けられ、違反すると罰則が設けられることになるものです。
前回2013年の改正から5年が経過し実態調査をしたところ、規制対象外だったレベル3に解体作業で取り残しなどによるアスベストの飛散が判明し、今回規制対象になりました。
アスベスト(石綿)とは
天然の鉱物「繊維状けい酸塩鉱物」で、繊維がとても細く耐熱性に優れている点などから「奇跡の鉱物」として建築資材に多く使用。 しかし、使用の際に吹き付けや除去作業する過程で人が吸入してしまう恐れがあり昭和50年に原則使用禁止。 その後、アスベストが主に肺などに重度の疾患を引き起こすことが明らかになり、現在製造等も禁止。 アスベスト自体が緊急性のある問題ではなく、工事の過程での飛散、吸入が問題となっているため法律を定めることで飛散の防止や予防などへの対策が取られている。 |
アスベスト建材レベル3
アスベストは発じん性で分類。発じん性とは粉じんの発生しやすさを指す。 レベル1が最も危険度が高く、レベル3は比較的発じん性が低いもの。 粉じんが飛散しにくい形になっている建材で屋根材に使用されるスレートや石膏ボード、水回りの床に使用されるビニール製の床タイルなどに使われている。 |
法改正による規制強化がもたらす【メリット】【デメリット】とは?
規制対象の拡大・強化や作業記録の義務化により、これまで以上に厳しい基準が設けられます。厳しい基準が設けられることで家主側にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかまとめました。
メリット | ・基準が厳しくなることで近隣住民へのアスベスト飛散による健康被害などを抑える効果が得られる。
・安心して解体工事ができる。 |
デメリット | ・従来に比べ、事前に行う調査・報告など解体業者がかかえる業務が増えることによって、よる解体費用がの増加する。
・解体業者の業務が増え、忙しくなることから解体工事を申し込みたくても見積りや解体工事を請け負ってもらいにくくなる可能性がある。 |
この法律は2022年から施行されるので、解体工事前にする業務の追加により費用の増大は避けられません。
法律施行前に解体工事することで費用を抑えることができます。
古い建物やブロック塀への補助金申請について
市区町村によって制度が異なりますが、古い建物やブロック塀などの解体工事への助成金があり、申請すれば解体にかかる費用の一部助成を受けられるのでご紹介します。
名称を「解体(除去)費用補助金」または「解体費用助成金」といわれるもので、主に空き家などの老朽化した家屋の解体費用の一部が自治体によって助成される制度です。
必ず助成されるものではなく一定の条件を満たしている場合などに受けられる可能性がある制度になります。
助成を受けられる条件は、事前に自治体へ確認するといいでしょう。
助成金には建物の解体(除去)以外にブロック塀の解体(除去)、アスベスト除去もありますが市区町村単位で制度が異なりますのでご確認ください。
住宅を解体した後に行う手続き
ここまで、住宅の解体前に行う手続きについてご紹介してきました。
解体前はとても多くの手続きや処理があり、解体工事の着工までに済ませなければいけないものばかりでとても慌ただしい印象を受けたのではないでしょうか。
次は解体が完了したあとに行う手続きです。具体的にどんな手続きが残っているのか詳しくご紹介していきます。
建物滅失登記の届け出
住宅など建物は、建ったと同時に「登記簿」という建物に関するリストへ登録する必要があります。
解体後は逆に、建物が消失したことを届ける「建物滅失登記」の手続きを解体工事後1カ月以内にしなければいけません。
この手続きは解体業者ではなく家主が行うか、もしくは司法書士・土地家屋調査士へ依頼し、お住いの近くの法務局で行います。
こちらが必要な書類です。
建物滅失登記の届け出に必要な書類 |
※自治体によっては発行3カ月以内の印鑑証明書の添付と実印が必要な場合あり。 |
一見難しそうな手続きですが、法務局のHPに申請書の記載例もあるので参考にしてください。
また法務局の窓口では担当の職員もいるので安心して申請できます。
手続きを司法書士や土地家屋調査士へ依頼すると費用として4万円ほどかかります。
届け出を怠った場合の罰則と対応
建物滅失登記の届け出には罰則規定があります。
手続きを怠ると、最大10万円の罰金が課せられるので注意が必要です。(不動産登記法136条)
また、罰金以外にも不必要な固定資産税が発生することもあり、解体後に新しい物件を購入する時に住宅ローンの審査への影響も考えられます。
届け出を怠ることで被るデメリットが大きいのでくれぐれも注意しましょう。
土地滅失登記の届け出
建物滅失登記の手続きをしたあと、場合によっては「土地滅失登記」の届け出もする必要があります。(不動産登記法第42条)
地震、台風、洪水などの自然災害や地盤沈下が起き土地が機能を果たせなくなったり、存在がなくなったりした場合に行う手続きです。
それほど多いケースではありませんがごくまれに必要になります。
手続きは土地の消失から1カ月以内に法務局へ申請します。申請は土地家屋調査士へ依頼するとスムーズにできます。
届け出を怠った場合の罰則と対応
土地滅失登記も建物滅失登記と同じく、手続きを怠ると罰則規定に当たります。
申請を怠っていた場合、速やかに対応すれば問題ありませんがそのままにしておくと最大10万円の罰金が課せられますので注意が必要です。
水道の停止
解体工事前、唯一停止の手続きをしなかった水道。解体工事の際にホコリが立たないよう散水用に使っていましたが、解体工事完了後は水道を停止させる手続きをします。
水道の手続きは簡単で、管轄の水道局や水道課へ連絡するか、インターネットでの手続きも可能です。
水道の停止手続きには以下の情報が必要です。
水道の停止手続きに必要な情報 |
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たとえお客様番号が分からなかったとしても、水道局へ連絡し、説明をすれば本人確認をしたのち、手続きを進めてもらえます。手続きは停止したい日時の1週間前にはしておくとよいでしょう。
ただし、建て替えなどの場合はそのまま使うので水道を停止する必要はありません。
解体の手続きを業者へ依頼した場合のメリット・デメリット・注意点とは?
家主は解体工事が迫ってくる中、不用品の処分やライフラインの停止などに追われてなかなか他の手続きにまで手が回らないのが現実ではないでしょうか?
そこで、解体業者でできる手続きをおまかせした場合のメリット・デメリットをご紹介します。
また、手続きに関する注意点もあわせてご紹介します。
【メリット】煩雑な手続きは詳しい業者へおまかせ
手続きのなかには解体業者でも家主でもできるものがいくつもありますが、家の解体工事はそう何回も経験することではありません。
ただでさえ家主は解体工事の前にするべき作業や手続きがたくさんあります。
そのぶん解体工事を専門におこなっている業者は手続きに関しても経験豊富。
お願いできる手続きはおまかせし、家主は解体前の作業に集中できます。
【デメリット】手続きにかかる追加費用の発生
業者へお願いするということは、追加の費用が発生することへつながります。
「建設リサイクル法」や「道路使用許可」の申請は通常、解体業者が手続きを代行してくれます。あとから代行を依頼すると追加の費用を請求されることもあるので契約時、手続き代行にかかる費用を含めた見積書を作成してもらうとよいでしょう。
費用が発生する例を挙げてみます。
例えば、「建物滅失登記」を司法書士や土地家屋調査士へ依頼すると約4万円の費用が発生します。
通常、この手続きは専門家へ依頼しますが、先にお伝えしたように、家主自身が行うことも可能です。事務手続きが苦にならない、工事費用を抑えたい方は挑戦してみてください。
【注意点】解体業者によっては手続きを家主まかせ?
多くの解体業者が解体にかかる手続きを代行してくれますが、なかには「建設リサイクル法」などの手続きを家主に依頼するといった悪徳業者もいます。
悪徳業者へ出会わないために家主側ができることは優良な解体業者を探すことです。
では、どのようにして見つけるのでしょうか?それにはいくつか方法があります。
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解体業者もたくさんあるのでしっかりと見極めが重要です。
業者の見つけ方は多岐に渡るので、ご自分に一番あった方法で優良業者をみつけるとよいのではないでしょうか。
まとめ
住宅の解体に関わる手続きについてご紹介してきました。必要な手続きを表にまとめました。
家主 | 業者 | |
解体前 |
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解体後 |
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たくさんの手続きがあるので、家主側でできること以外は詳しい業者へお願いするのもいいかもしれません。
解体工事をご検討の方は見積りの段階で業者と細かく取り決めるなどして手続きをスムーズに済ませれるように相談してみてください。